武田邦彦×伊藤貫:世界で何が起こっている徹底解説スペシャル
- 渡邉 定好
- 2 日前
- 読了時間: 9分
NotebookLMによるまとめ
今回のYouTube動画の書き起こしは、日本の知性とされる専門家二人が、世界の動向を徹底解説する特別配信です。特に、トランプ政権下のアメリカの外交方針、特に中東や中国・ロシアとの関係、そして現代社会の教育や家族制度の問題点に焦点を当てています。また、専門家はウクライナ戦争の背景にある歴史的要因や西側諸国の対応、そして日本の立場と今後の課題についても議論を展開しており、多岐にわたる国際情勢や社会問題への深い洞察が提供されています。
現代の大学教育における「功利主義」の問題点とは何であり、それがもたらす影響は何ですか?
西洋文明が現代において「敗北」と見なされつつあるというご質問ですね。ソースによると、この「西洋文明の敗北」は今日の議論の主要テーマの一つとされています。
伊藤氏によると、西洋文明の崩壊は非常に深刻な問題であり、その根本的な原因は15世紀から16世紀にまで遡るとされています。この頃、ヨーロッパの普遍的な価値観であったギリシャ哲学(特にプラトンやアリストテレス)やキリスト教学を壊す動きが現れました。特に、マキャベリ、ホッブズ、ベーコンの3人がこの変化に大きな役割を果たしたと指摘されています。
マキャベリは、キリスト教的な道徳を「インチキだ」とし、国家間では互いに騙し合い、打ち負かし、強い者が勝つべきだと考えました。勝つためにはどんな嘘や策略を使ってもよく、手段を選ばないという考え方を提唱したと説明されています。
ホッブズは、「万人の万人に対する闘争」を唱え、人間は常に闘争状態にあると見なし、国家の王が巨大な権力を握り、人民を抑えつけ、他の国を打ち叩くべきだと主張しました。
ベーコンは功利主義の始祖として、自分が得をするか損をするかという判断で行動すれば良いと考えました。
これらの3人の考え方は、従来のギリシャ哲学やキリスト教学の価値判断から大きく離れたものであり、これが西洋の敗北の始まりであると伊藤氏は述べています。
さらに、18世紀後半の啓蒙主義では、国王やキリスト教会の権威を打ち壊し、自由主義、民主主義、平等主義という政治思想を実行すれば全てうまくいくと考えられました。これは19世紀から20世紀の政治思想の基盤となりましたが、エマニュエル・トッドの言い方を引用しつつ、伊藤氏は自由主義、民主主義、平等主義だけでは、人間の「生きる意味(Meaning of Life)」や「生きる任務(Mission of Life)」といった最も大切な価値判断の問題は解決しないと指摘しています。
そして、伊藤氏が最も問題視するのは1960年代以降の変化です。この頃から、特にアメリカの教育者や心理学者、社会学者が人生の目的は「自己実現(Self-Realization)」や「自己充足(Self-Fulfillment)」にあると言い始めました。これにより、ヨーロッパ人もアメリカ人も「自分、自分、自分、自分」と自己中心になり、「自分の欲望を全て肯定する」生き方を追求するようになりました。このような生き方を60年間続けてきた結果、人間の価値判断が「ぐちゃぐちゃになった」ことが、この時期以降に西洋(特にヨーロッパとアメリカ)が「狂ってきた」理由であると伊藤氏は分析しています。
武田氏も、頭で考えて良いと思うことが必ずしも良くない結果を招くことがあるとし、特に教育の場で多くの人が成功できないにも関わらず「何でもしろ」と言われると挫折が続くと述べており、これも現代社会、特に西洋社会のあり方に対する批判として捉えられます。
また、イギリス、アメリカ、フランスの核家族文化や個人主義、**セクシュアル・リベラライゼーション(性の解放)**といった価値観を世界中に押し付けようとしていることも、西洋文明の問題点として挙げられています。これらの価値観は、世界の人口の多数派を占める「グローバル・サウス」には受け入れられていないと指摘されています。
国際政治の観点からは、ソ連崩壊後にアメリカが目指した**「ユニポラ・ヘジェモニー」(単一極による覇権)と「アメリカナイゼーション」政策が、人類全体から見れば少数派であるアメリカの家族制度を含む価値観を世界中に押し付けようとする傲慢なものであったと分析されています。しかし、この一方的なあり方は、現在の「マルチポラライゼーション」(多極化)や「マルチ・シビライゼーション」(多文明世界)**への国際構造の変化の中で受け入れられなくなりつつあり、これも西洋文明、特にアメリカのモデルの相対的な地位の低下、すなわち「敗北」という状況につながっていると言えます。
イギリス、アメリカ、フランスの「核家族文化の押し付け」が世界に及ぼす影響と、それへの対応策は?
西洋文明、特にイギリス、アメリカ、フランスの「核家族文化」が世界に与える影響、およびそれに対する対応策について、提供されたソースに基づいてご説明します。
この議論は、ソ連崩壊後にアメリカが推し進めた**「ユニポラ・ヘジェモニー」(単一極による覇権)と「アメリカナイゼーション」**政策と関連付けられています。アメリカ政府は、世界中の国々がアメリカの経済制度だけでなく、人間関係までアメリカの真似をすべきだと考えました。これが、イギリス、アメリカ、フランスの家族システムを含む価値観を世界に押し付けようとする背景にあったと言えます。
しかし、この「核家族文化の押し付け」は、いくつかの問題点と影響を世界に与えています。
世界の多数派には受け入れられていない: イギリス、アメリカ、フランスの家族体系は、核家族を中心とした非常に個人主義的なシステムです。しかし、エマニュエル・トッドの分析を引用しつつ、これは人類全体から見れば極めてマイノリティ(少数派)の家族制度であると指摘されています。特に、世界の人口の多数派(80%から85%)を占める「グローバル・サウス」と呼ばれる国々は、このようなイギリス、アメリカ、フランスの核家族制度や、性の解放といった価値観を絶対受け入れたくないと考えています。彼らは、共同体を重視する日本やロシアのような家族制度に近い考え方を持っているとされています。
「押し付け」元の国でも問題が生じている: 核家族制度や個人主義が先行した結果、押し付け元の国自身でも問題が見られます。フランスでは、この50年間で国民がバラバラになり、協力して何かを成し遂げようという意欲がなくなり、一人ひとりが非常にスケールの小さな人間になってしまったと感じられているという報告があります。これはイギリスやアメリカでも同じことが言えるかもしれないと述べられています。
人間の価値判断の混乱と劣化: ソースでは、核家族文化や個人主義と直接的に結びついているわけではありませんが、現代の西洋社会(特にアメリカとヨーロッパ)が「狂ってきた」理由として、1960年代以降に**「自己実現」や「自己充足」が人生の目的とされ、「自分、自分、自分」という自己中心的な考え方が強まった**ことが挙げられています。このような生き方を60年間続けた結果、**人間の価値判断が「ぐちゃぐちゃになった」**と分析されています。これは、教育における「功利主義」、すなわち「金が稼げる人間を作る」ことに主眼を置く教育モデルとも関連しており、学問の本来の目的を見失わせ、人間の能力や思考力の低下を招いていると批判されています。
生物学的な原理との乖離: 武田氏は、生物学的な観点から、核家族は「絶対ダメ」であり、できるだけ大家族で、男女がそれぞれの役割を担う方が生物として「栄える」と主張しています。オスとメスができるだけ異なる体と行動をすることは「偉大な進歩」であり、それを一緒にするような考え方は生物学的に見て「馬鹿な」ことだと述べています。群れも非常に大切であり、生物は群れを作ることによって「幸福な人生」を送れるようになったと論じています。現在の核家族化や男女平等の考え方は、このような生物学的原理から外れており、知恵がない結果だと批判しています。
これらの問題に対する対応策としては、以下のような点が示唆されています。
多文明世界の現実を認識する: 現在の国際構造は、アメリカ一極支配から**「マルチポラライゼーション」(多極化)や「マルチ・シビライゼーション」(多文明世界)へと変化しています。この現実を認識し、アメリカ、イギリス、フランスといった少数派の文明の家族制度や価値観を模倣することをやめるべき**であると強く主張されています。世界共通の普遍的な経済制度や働き方といったものはなく、どこかの国も自分たちの文明にあった働き方や家族制度があるという視点を持つことが重要です。
国民自身が主体的に考え、議論する: 日本を例に挙げ、現状をどう考え、どのような道(例えば核武装をするかしないか、続国としてやっていくかなど)を選ぶべきかについて、政治家任せにせず、日本国民自身が主体的に議論すべきであると強調されています。残念ながら、日本ではこのような議論がほとんど行われていない現状があると指摘されています。
自身の文明や歴史に基づいた深い思考を取り戻す: 日本は明治維新以降、仏教や中国古典、あるいは日本独自の価値観(武士道、天皇制、万葉集など)といった、** Nara時代から江戸時代末まで培われてきた深い思考の源泉を捨ててしまい**、西洋やアメリカの表面的な価値観を模倣してきたと批判されています。このような浅い価値判断能力しか持てなくなったことが、現在の日本の厳しい状況につながっているとして、自身の文明や歴史に基づいた深い思考を取り戻すことが重要だと論じられています。
功利主義からの脱却: 教育を含め、学問や人間の営みを金儲けや出世といった功利主義的な観点のみで捉えるのをやめることが必要です。学問は本来、金銭的な利益とは切り離されたものであり、学問そのものが好きだからやる、貧乏になってもやりたいというものであったという本来の姿に戻ることが望ましいとされています。
リーダーシップのあり方: ロシアのプーチン大統領がトップ官僚にロシア哲学の古典を読むことを推奨し、ロシア文明のあり方について考えさせている例を挙げ、リーダーが単なる目先の利益や権力だけでなく、自身の国の文明や歴史、哲学といった深いレベルで物事を考えることの重要性が示唆されています。
総じて、イギリス、アメリカ、フランスの核家族文化の押し付けは、国際政治構造の変化の中で不適合を起こし、「グローバル・サウス」には受け入れられず、押し付け元の国自身にも問題を生じさせていると考えられています。これに対処するためには、世界の多文明化を認識し、自国の文明や歴史を深く見つめ直し、功利主義的な考え方から脱却して、国民自身が主体的に議論し、深い思考を取り戻すことが必要であると論じられています。ただし、これらの問題は根深く、簡単な解決策はないとも述べられています。
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